「通帳が見つからない」
「どこの銀行に口座があるか分からない」
相続の場面では、こうした状態から手続きが進まなくなるケースがよくあります
従来は通帳やキャッシュカードが手がかりとなっていましたが、近年はネット銀行や通帳レス口座の普及により故人の財産を把握することがいっそう困難になっています。
このような状況を踏まえ、2025年4月1日より開始されたのが「相続時預貯金口座照会制度」です。従来は金融機関ごとに個別に行っていた調査について、預金保険機構を通じて全国の金融機関に対し一括で照会することができるようになりました。
本記事では、この制度の仕組みと実務上の注意点について解説します。
1.相続時預貯金口座照会制度とは
相続時預貯金口座照会制度とは、被相続人のマイナンバーに紐付けられた預貯金口座の有無について、預金保険機構を通じて横断的に照会することができる制度です。なお、申請は相続人等が金融機関の窓口で行います。
2.制度を利用するうえでの注意点
まずこの制度によって確認できるのは、口座の有無、金融機関名、支店名などです。口座残高や取引履歴などは確認できないため、別途、各金融機関へ個別の照会が必要となります。
そのうえで、この制度を利用するにあたって最も重要なのは、マイナンバーと紐付けされた口座のみが照会の対象となることです。紐付けされていない口座については照会できないので注意が必要です。
制度が開始されてから日が浅いこともあり、現状ではすべての口座がマイナンバーと紐付けられているわけではありません。特に亡くなった方が高齢である場合には、口座の紐付けが行われていないケースが多いと考えられます。
その結果、照会を行っても「該当なし」とされる一方で、実際には口座が存在していたという事態も十分に起こり得ます。したがって、「照会結果に出てこなかった=口座が存在しない」とは限らないので注意が必要です。
また、本制度の利用には所定の手数料(約5,060円)がかかり、照会の結果、口座が見つからなかった場合でも返金されません。
3.実務での対応
本制度はあくまで「最初の手がかりを得る手段」であり、これだけで調査が完結するわけではありません。
実務上は、照会結果をもとに各金融機関に対して個別に手続きを行うことになります。
また、照会結果に現れない口座については、以下のような方法により補完的に調査を行うことが一般的です。
・自宅に残された郵便物や金融機関からの通知の確認
・通帳やキャッシュカードの有無の確認
・生活圏内の金融機関への個別照会
これらの情報を総合的に確認しながら、口座の所在を特定していくことになります。
4.生前整理の必要性
このように、制度が整備された現在でも、預貯金の所在を完全に把握することは容易ではありません。仮に遺産分割後に故人の口座が新たに発覚した場合には、遺産分割協議をやり直す必要が生じることもあります。
こうした事態を避けるためには、相続発生後の調査に頼るのではなく、生前のうちに財産を整理し、遺言書等で明確にしておくことが重要です。
5.遺言書の注意点
実務上、遺言書が存在していても、相続手続きが円滑に進まないケースがあります。例えば、遺言公正証書において「すべての財産を特定の相続人に相続させる」といった包括的な記載がされ、かつ遺言執行者が指定されている場合であっても、通帳等を保管する他の相続人が遺言内容の不満から引き渡しを拒むなどの事情により、遺言の執行手続きが停滞してしまうことがあります。
このような場合、遺言執行者であっても、どの金融機関に口座が存在するのかを一から調査せざるを得ず、結果として時間や費用がかかることになります。
このような事態を防ぐためには、遺言書の作成段階で、預貯金口座や不動産などの財産をできる限り個別具体的に記載しておくことが重要です。
あらかじめ財産の内容が明確になっていれば、わざわざ相続人が時間と費用をかけて調査をする必要もなく、無用なトラブルの発生を防ぐことにもつながります。
まとめ
相続時預貯金口座照会制度は、預貯金の所在を横断的に確認できる便利な制度ですが、マイナンバーに紐付けられた口座に限られるなど、一定の制約があります。
また、口座残高等の詳細情報は取得できないため、最終的には各金融機関での個別手続きが必要となります。
制度の特徴と限界を正しく理解し、他の調査方法と併用しながら活用することが重要です。
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