終活の準備をしたいが、何から手を付ければよいか分からない――
そのような場合は、エンディングノートから始めるのがおすすめです。

延命治療はどうするのか、葬儀はどのような形にしたいのか、家族同然のペットは誰に託すのか。
多くの人が「余生や死後について希望や不安」を抱いています。

しかし、これらは何も残していなければ家族には伝わりません。
その結果、家族が判断に迷い、本人の望まない形で物事が進んでしまうこともあります。

また、財産や連絡先の情報が整理されていないと、金融機関の口座や加入している保険の所在がわからず、相続手続きが滞る原因となります。
連絡してほしい知人の情報がなければ、誰に連絡すべきか分からず、家族が判断に迷うことにもつながります。

エンディングノートは、こうした「自分の希望」と「必要な情報」を整理し、残された家族の負担を軽減する第一歩となるものです。

なお、エンディングノートには決まった書き方や形式はありません。
すべてを一度に書く必要もなく、書けるところから少しずつ書き足していく形で問題ありません。
まずは思いついたことをメモする感覚で始めてみてください。


エンディングノートでできること

エンディングノートは、「残された家族への思いやり」であると同時に、「これからの自分の人生を見つめ直すためのツール」でもあります。

1. 家族の負担を軽減し、トラブルを防ぐ

銀行口座、証券口座、保険、ネットバンクや各種サービスの情報をまとめておくことで、家族がそれらを探し出す手間を減らすことができます。
これらの情報が整理されていないと、どこにどのような財産があるのか把握できず、相続手続きが進まない原因となります。

また、過去の贈与の記録を残しておくことで、遺産分割の際の認識のズレを防ぐことにつながります。
記録がない場合、「聞いていない」「知らない」といった行き違いからトラブルに発展することもあります。

さらに、自宅内の現金(タンス預金)や貴重品、貸金庫の保管場所を記しておくことで、申告漏れや見落としを防ぐことができます。
これらが分からないと、相続財産の把握自体が困難になります。

2. 家族の心理的な迷いをなくす

医療や介護、終末期の延命治療に関する意思を示しておくことで、家族が重大な判断を迫られた際の負担を軽減できます。
意思表示がない場合、家族が判断を背負うことになり、大きな精神的負担となります。

また、葬儀の形式や連絡してほしい人、お墓についての希望を記しておくことで、家族は本人の意向に沿った対応をしやすくなります。
希望が分からないまま進めると、「これでよかったのか」と悩む原因にもなります。


エンディングノートに書くべき内容

エンディングノートに記載すべき内容は、大きく次の5つに分けられます。

1. 自分自身の情報

氏名や生年月日などの基本情報に加え、これまでの歩みや思い出、趣味や好きなことなど何でも自由に書いてかまいません。
また、今後やりたいことや行きたい場所などを書いておくことで、残りの人生を豊かにするきっかけとなるでしょう。

2. 財産・資産に関する情報

家族が相続手続きでもっとも困る部分であるため、なるべく詳細な情報を記載しましょう。

・預貯金:金融機関名、支店名、口座番号(ネットバンクを含む)。
・証券口座:証券会社名、支店名、口座番号。
・保険:加入している保険の商品名、保険会社名、証書の保管場所。
・不動産:所有している不動産の所在地、購入時の契約書や領収書の保管場所。
・負債: 借入金、ローン、連帯保証債務の有無 。
・その他:過去の贈与の記録(贈与契約書の場所)、名義預金や名義株の有無。自宅内の現金の保管場所(タンス預金)や貸金庫の情報も忘れず記載しましょう。

これらの情報がわからないと、相続手続きが進まず、家族に大きな負担がかかります。

3. 医療・介護に関する希望

持病やかかりつけ医の情報に加え、延命治療を希望するかどうか、告知を希望するか、介護が必要になった場合の希望(自宅か施設か)、その費用をどう捻出するかなどを記載します。
これらの意思表示がない場合、家族が判断を迫られ、大きな精神的負担を抱えることになります。

4. デジタル資産・サービスの情報

パソコンやスマートフォンのログインID・パスワード、有料サブスクリプションなどの契約状況などを整理します。
これらは本人しか把握していないことが多く、情報がなければ解約、削除できないといった問題が生じます。

5. 家族・知人や葬儀に関する情報

・親族関係図:法定相続人が誰になるかを整理した図(前妻との子や婚外子を含む)。
・連絡先リスト: 訃報を知らせてほしい友人・知人の名前や関係性(たとえば高校時代の同級生など)およびその連絡先 。
・葬儀やお墓について:葬儀の形式(家族葬など)、宗派、呼びたい人の範囲、予算 。 納骨場所、お墓の管理を誰に託すか、散骨や樹木葬などの希望 があればその旨。
・遺言書の有無: 遺言書の存在や保管場所、遺言執行者がいれば氏名と連絡先。

また、ペットを飼っている場合は、引き取り手や飼育についての希望も記しておくことが重要です。


エンディングノートは終活の第一歩

終活を何から始めるべきか迷っている場合、エンディングノートから手をつけるのは非常に有効です。

ノートの項目を見ていくだけでも、自分にとって何が課題なのかが見えてきます。
「認知症になったらどうするか」「延命治療はどうするか」といった具体的な場面を考えるきっかけにもなります。

また、形式が自由であるため、遺言書のような厳格なルールもなく、気軽に始められる点も大きな特徴です。
後から何度でも書き直せるため、まずは不完全でも問題ありません。


エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートには法的効力はありません。
財産を誰にどのように分けるかといった内容は、別途「遺言書」で定める必要があります。

エンディングノートは、家族に必要な情報や自分の希望を伝えるためのものです。
まずはノートで整理し、そのうえで必要に応じて遺言書の作成を検討するとよいでしょう。


まずは書けるところから始める

すべてを一度に完璧に書こうとする必要はありません。
思いついたことや分かる情報から、少しずつ書き始めることが大切です。

エンディングノートは、「自分の希望を実現するための準備」であると同時に、残された家族が困らないための大切な手がかりでもあります。

終活の第一歩として、まずは書けるところから始めてみてはいかがでしょうか。

終活や相続に関するご相談については、当事務所のホームページでもご案内しています。
下記のリンクから。
https://mankan-souzoku-support.com/

この記事の執筆者
行政書士よしかわ事務所
行政書士 吉川英良(登録番号:第23190056号)
愛知県豊田市