相続争いは富裕層だけの問題と思われがちですが、司法統計によると、家庭裁判所へ持ち込まれる遺産分割事件の多くは遺産額が比較的少ない、ごく普通の家庭で発生しています。
家庭裁判所で争われる遺産分割事件の約77.6%は、遺産額が5,000万円以下の家庭で発生しています。相続財産額が1,000万円以下の層(33,8%)と、自宅不動産の評価額を含む1,000万円超~5,000万円以下の層(43,8%)が、トラブル全体の約8割を占めていることからも明確です。

1.なぜ「財産の少ない家庭」こそ揉めるのか?

相続財産が少ない家庭ほど揉めやすい最大の原因は、「分けにくい財産」しかないからです。1,000万円超~5,000万円以下の層の場合、自宅不動産が資産の大部分を占め、預貯金などの現金が少ない傾向があります。遺言がないと、自宅不動産は相続人全員の「共有財産」となり、分割が難しいため、「誰が住むのか」「売却するのか」を巡って意見が対立します。

また、自宅を特定の相続人が単独で取得する場合、他の相続人へ代償金を支払う必要がありますが、預貯金が不足しているため代償金を支払えず、遺産分割協議が膠着してしまいます。

2.「仲が良い」は「揉めない」保証ではない

家族関係が良好であっても、いざ相続が発生し、感情や経済的な事情が絡むと状況は一変することがあります。相続人になった子の配偶者などの意見が強く影響し、話し合いがこじれるケースも少なくありません。
遺言書は、故人の最終的な意思を法的な形で残すことで、こうした将来的なトラブルの芽を摘み、家族の円満な関係を維持するための最も確実な「保険」となります。

3.スムーズな手続きのため

これらの問題を未然に防ぎ、大切な家族を「争族」から守るためには、財産の多寡にかかわらず、生前のうちに遺言書を作成しておくことが、最も確実な対策となります。
遺言書があれば、遺産分割協議を行うことなく、不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きを迅速に、かつ単独で進めることができます。これは、残された家族の手間や負担を大幅に軽減します。